2020年3月14日土曜日

”カルス形成を重視した切りかえし剪定の必要性とその訳”





生物は細胞が損傷したさいに傷を修復する機能をもっていますが、樹木も細胞分裂によりその機能を発揮することはご承知かとおもいます。

「生きているとはどういうことか」という問いに「アイデンティティおよび再生産能力の維持」と答えたとある哲学者が提示するように、一見とまっているかのように見える「生きている」植物も、その表皮の内側では、我々人間の目から測ると小さな細胞が、猛烈な速度で細胞分裂をおこなっていることが想像できるかとおもいます。

しかし想像では確信に至らないせっかちな私は、我が家で生活を共有している小さな樹木に「損傷(剪定)」をあたえ、その後のカルス(分化していない植物細胞塊)形成の過程を容易に観察することができます。






上の画像は、剪定を施してから一ヵ月が経過した、実生三年目のケヤキです。

幼樹だからということもあり細胞分裂が活発なのでしょう、カルスの巻きを著しく観察することができますが、よく見るとカルスは枝のついている基部からの巻きかえしが強く見られます。

このように枝を残し、その枝の基部で正しく剪定することは、樹木の養分道通を断たず剪定のストレスを軽減させるという意味でも理にかなっているかとおもいますが、この方法が暗示するもう一つの意味は、一固体の樹木のなかにも、各部の役割とその線引きを明確にもっているということでしょうか。

画像のケヤキも、傷口の治癒を細胞分裂が活発な枝にまかせ、胴体の幹はより頂部に養分をおくることに専念しているかのごとく観えるように、胴体部分と枝部分を紙一重のところで区別していると観察します。

このことから傷口の治癒を優先した場合、傷口周辺の旺盛な成長枝を、可能なかぎり多くの本数のすことが癒合においては最良であるとよみとります。

止むをえず強剪定された樹木などもありますが、残った傷口から発生した剪定されやすい胴吹きは、実は残すことが癒合速度を短縮するカギなのかと思いをめぐらせるできごとでした。


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